私どもの団体が秋の褒章を受章

私ども「われら海岸探偵団」は、令和3年(2021年)11月3日文化の日に秋の褒章「緑綬褒章」を受章しました。
この受章に至ったのは、長年の活動の成果だと思います。しかし、この受章は、事務局管理を行う者が受賞したのでなく、これまで本活動にご参加していただいた皆様方の努力の賜物だと思います。心から「ありがとうございました」をお伝えさせていただきます。そして、おめでとうございます。どうか、これからも、ご参加のほど、よろしくお願いいたします。

さて今回、私どものような民間人が中心となって運営している清掃団体が、褒章を受章することは全国的にも極めて稀なことだと考えています。その一方で、一般の人々から私どもの団体を見てみれば、「単なるゴミ拾いで、褒章?」と首をかしげる人も多いかと思います。このように思うのも当たり前のことだと思います。そこで、今回の受章に至った理由を私たち団体側で考えてみた。改めて考えてみるといくつかの点で、これが「きっかけ」ではないかというところが見えてきました。まず、大きな評価点は、20年以上という長期間の活動をしてきたことです。しかし、それだけで受章することなどありません。全国の過去の類似した受賞者(団体)を見てみれば、私たちと変わらない活動と実施年数です。それだけでは、今回の受章に値しないことなど火を見るよりも明らかです。他に何があるかを見てみると、私たちの活動が自律した活動をしてきた点が挙げられます。企業や行政から必要以上の資金援助を受けず、身の丈に合った活動をし続けてきたこと。さらには、この頃よく耳にする「SDGs」持続可能な取組みといった時代的要請による後押しがあったたからこそ、評価対象になったのではないかと推測しています。
具体的な実績を言えば、この20年間に私どもの活動に参加された方は、9,100人以上で、回収したゴミの量は177,000Kg以上になります。欲を申せば、新型コロナウイルス感染症拡大さえなければ、参加者数も1万人を、ゴミの回収量も200,000Kgを優に超えていたと思います。筆者がこんな欲く深いことを書けば、多くの読者が、私たちの団体には、参加人数やゴミの回収量といった目標がありきで活動しているように誤解されてしまいそうですが、そんなことはありません。本活動を開始した頭初から目標数値などありませんので、誤解がないようにお伝えします。だからといって、活動をやりっぱなしにしてきたわけではありません。私どもは、目標数値を設定しない代わりに、毎回の活動記録を残していきました。ここが、本受章にあたって、受章審査時のエビデンスになったことは間違いないと思います。このことからも一見、持続可能な活動が重視されていますが、ただ長く活動を続けることが重要な事ではないということです。また、目標を掲げ、その目標に向かってがんばる姿勢が重要な事ではありません。最も大切なことは、続けていくに当たり、自分たちがどのように成長していったのかという過程が大切だと思います。その過程を未来の人々が自分の目で確認できる形として、今を生きる人々が残していくことで、この記録が今後訪れるであろう未来の難局を乗り越えていくための羅針盤的役割を果たすものだと思います。
2020年辺りから、「持続可能な開発目標(SDGs)」があらゆる場面で盛んに言われていますが、この考え方は企業人・組織人にとって確かに有効的な考え方です。しかし、その一方で一般人にとっては、「目標」という言葉を聞くだけで拒否反応を引き起こす人も数多くいます。ここに企業人・組織人と一般人との間に温度差が出てきているように思えて仕方ありません。私たちは、SDGsという言葉が世間一般に出回る以前から「継続した市民活動や団体の運営」に焦点を当てて実践してきました。つまり、一般市民が活動に定着しやすい活動のあり方を実践的に調査してきました。これまでの一連の活動過程の中でわかってきたこととは、目標を掲げず、その時々で、出来ることを確実に行動していく、そのような姿が一般人にとって居心地の良い活動空間になっているのではないかということです。私たちは、私たちなりに継続できる市民活動とは何かを、毎回の活動を通じて実施・検証をしてきました(その成果こそが、前述した数値化された具体的成果です)。この実践的調査は、まだまだ進行形であり、これからが本番だと思います。このことに対する真の答えは、まだ先でなければ出てこないようです。どうか、この果てしない調査研究と、最も肝心な「われら海岸探偵団」の活動にご参加していただき、どのように団体の動きが変わっていくのかを私たち運営者側と一緒に確認してもらいたいと思います。

追伸
受章が決まってすぐに、皆様方にお知らせしなかった理由は、賞詞(写真掲載している賞状のこと)が私ども団体の手元に届かなかったからです。幸いに年を跨ぐことなく、令和3年中に賞詞が私たちの手元に届いたことへ感謝しています。また、このことを皆様方へ年内にお知らせできたことについても、重ねて感謝しています。
本来であれば、東京での伝達式、天皇様への拝謁などといった一連の儀式があるのですが、昨今の新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から全て中止になりました。残念で仕方ありません。しかし、見方を変えて考えてみれば、私たちに対し「まだまだ努力が足りぬ、もっともっとがんばりなさい」という天の声を形としてお示しになされたのではないかと思います。いつの日か、天皇様に私どもの活動をお知らせする日が来るまで、驕ることなく粛々と活動を続けていく必要があると思います。私たちにとって仕切り直しの出発ですが、決して、天皇様に私どもの活動を知ってもらうことが目的でないことをお伝えしておきます。私たちの故郷、日本が他国に自慢できる海岸の美しさを市民で守り続けることこそが、私たちの活動の真の目的です。この点を取り違えないように、自分たちを律していきながら今後も活動を継続して参ります。

この場をお借りして、本受章に関する手続きに関わった関係者の皆様に深く感謝の念をお伝えします。

令和3年12月31日
われら海岸探偵団 団長 竹内裕二